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 心理職(臨床心理士/公認心理師)の収入について   

心理職(臨床心理士/公認心理師)になろうとしている方の一番気になるところとして、収入の面があるでしょう。
“お金のため”だけでできる仕事ではありませんが、お金の面はとても現実的な問題です。

しかし、心理職の収入のホントのところはあまり公になっていません。
日本臨床心理士会が数年に一度行っている調査結果では、年収100万以下〜1000万以上とかなりのひらきがあります。
第5・6・7回「臨床心理士の動向調査」参照、日本臨床心理士会会員は会員ページで第7回は閲覧可能)

年収200万以下が一定の割合でいますが、博士後期課程在籍中の方か、もしくは子育て中で仕事をセーブしている方などが中心だと思いますが、修士出るときにうまく仕事を得られなかった方も一定数いるのが現実です。

一方で、1000万以上というのは大学教員、医師臨床心理士、いわゆる”有名人”で講演に引っ張りだこの先生しかいないでしょう。
ボリュームゾーンは300〜500万です。

私自身の経験と求人情報から、どういった働き方をすればどのくらいの収入になるのか、一般的な職域で考えてみましょう。

 教育領域 
スクールカウンセラー(SC)と教育相談所が中心的な職場です。
SC
は都道府県・政令指定都市等によって若干異なりますが、関東の都県・政令指定都市では時給5000円前後であり、 週1日で年間140〜150万円程度です。
(勤務時間・日数は自治体により異なり、8時間×35週や6時間×42週など)
週2日SCをすれば280〜300万ですね。
東京都の場合は区でも採用しているところがあり、時給3000〜4000円程度です。(資格取得見込みの場合はそれ以下)


※名古屋市ではSCの常勤採用をしています。今後、他の自治体にも広がっていくことが期待されます。
私立中・高校でも最近は採用している所があり、時給30005000円くらいが多いようです。
私立の場合は常勤採用をしているところも少しずつ増えてきており、また週2〜3日勤務の学校もあります。

教育相談所は区市町村での採用になることが多いと思います。
多くの場合週4〜5日勤務(嘱託常勤)で、月給20〜25万くらいです。
ボーナスはないことが多いので、月給×12か月分が年収になり、 240〜300万ってところですね。

もう1日を都道府県採用のSCをやれば380440万程度になります。
そう考えるとけっこうもらえる感じがあるかもしれませんが、 資格取得後すぐに教育相談所4日・SC1日で仕事ができると考えるのは甘すぎです。
早くても3年目以降と考えてください。特に都市部のSCは飽和状態です。

教育関係の中でも平均相場が比較的高いのが大学の学生相談で、時給2500〜4000円くらいが多いですが、中には5〜6000円の求人もあります。
非常勤採用でも時給ではなく月給制のところもあります。
ただし、ほとんどの募集が即戦力を求めており、資格取得後経験年数510年は求められ、医療機関での経験が必須に近いです。
学生相談の常勤採用の場合は、大学職員もしくは大学教員に準ずる給与になるので心理職の中では比較的安定した収入になります。
※非常勤・常勤ともに任期つき(5年)の場合があります。
 ※非常勤の場合、夏期長期休業期間は学生相談室が閉室となり、その間の収入が減る場合もあります。一方、長期休みの期間中も勤務がある場合、来談者数は少ないため、その期間は相談予約がない日もあり、授業期間と長期休業期間のメリハリがあるのが特徴です。
 ※インテーカーを採用している学生相談室もあり、時給は1200〜1500円程度が多いです。


大学院付属の心理教育相談所/臨床心理センターについて:教育領域に含めるのは微妙ですが、大学院付属の相談施設の募集もあります。嘱託常勤であれば月25万前後、非常勤カウンセラーであれば時給1500〜2500円が多いようです。いずれも大学院生の指導を含むので、臨床歴が求められます。

 医療領域 
病院・クリニックがありますが、給与水準はばらつきが大きく、常勤か非常勤かで大きく異なります。

常勤の場合、週5日勤務で月給20〜25万くらいの採用が多く見られます。
ボーナスがあることが多く、年24か月分支給されればそれなりの年収にはなります。
さらに、社会保障や住宅手当などが手厚いことが多いようです。
国家資格公認心理師ができたので今後に期待です。

非常勤の場合、時給になりますが1500円〜1800
円、日給で9000円〜15000円くらいと考えてください。
※管理人はクリニックに勤務し始めたときは修士修了2年目で時給1200円スタート、9年勤務する中で1800円まで上げてもらいました。

クリニック付属の相談室に勤務になることもあり、中には歩合制のところもあります。
歩合制であれば、カウンセリング料の半分程度をもらえることが多いので、単価は比較的良いですが、担当クライエント数次第のため安定はしません。



いわゆる精神科病院・精神科クリニックだけでなく、心理職の活動範囲は広がっており、地域の小児科や整形外科、歯科医院などの求人も見かけるようになりました。

 私設相談機関 
歩合制のところが多いです。
カウンセリング料金の半額程度、1件3000〜4000円程度が主流。経験年数によります。


※〔2023.6追記〕
最近増えているのが、オンラインカウンセリングサービスを提供している会社と業務委託契約を交わして、個人事業主としてカウンセリングを行う形態です。
厳密には個人で開業しているのとは異なりますが、おおよそ個人開業とみなすことができます。
オンライン・電話・メール・SNSなど利用するツールによってカウンセリング料金が異なりますが、オンラインカウンセリングでは50分5000円程度が主流で、そこから手数料が引かれます。手数料についてはオープンになっていないので不明ですが、手元に入ってくるのは5〜6割程度ではないかと推測されます。

 産業領域 
企業内相談室とEAP専門機関に大きく分かれます。
一般企業内で社員として専任カウンセラーを雇っている企業は多くありませんが、給与はその企業の一般的な水準になるようです。

EAP機関は常勤採用が多く、給与は一般企業相当です。
月給2528万程度が多いように見受けられますが、3年程度の臨床経験を求められることが多いです。
非常勤採用している場合は時給1800〜2500円くらいです。

個人的には、産業領域が今後の伸びしろが大きく残されているところだと思います。
いわゆる心理療法・カウンセリングの対個人的な仕事よりも、社員向けの研修などの対組織的な仕事の割合がほかの領域よりも多くなることもあります。

 福祉領域 
他の領域に比べると、全体的に低めの傾向で、常勤採用で月給18〜22万くらいが多いように見受けられます。
賞与・各種手当てがあるかないかで年収が大幅に変わり、大きな昇給はあまり見込めないかもしれません。
ただし、臨床経験が少なくても常勤採用してくれることも多いようです。

※〔2023.6追記〕
最近増えているのが、児童発達支援・放課後等デイサービスでの採用です。株式会社や社会福祉法人など様々な母体が参入して事業所がかなり増えており、求人もかなり多くなっており、修士修了して間もない方が多く就職しているようです。”心理職”として採用されるというよりは、採用条件に様々な資格(保育士、作業療法士、理学療法士etc)がある中に心理職も含まれている状況であり、入職後も心理職として勤務するというよりは、職種は関係なく仕事をすることになるようです。給与面では、20〜24万程度の月給が多いようです。

 



さて、ここまでは一般的な話でした。
修了初年度は300万いかないことも多いと思います。
運よく常勤採用されればギリギリいくかもしれませんが、非常勤かけもちなら難しいでしょう。

非常勤でも3年目〜5年目くらいにかけて仕事が巡ってきて、3050万単位で年収が上がっていき、
350〜400
万くらいは確保できるようになると思います。(管理人の経験上)
1年目としては、月20万(日給1万)・年収240万を一つの目処(最低ライン)にされるといいのではないかと思います。

もう少し具体的にイメージしやすいように管理人のこれまでの収入について紹介します。
(関係各所に迷惑がかかるかもしれませんので、少しぼかしています)

修士修了1年目

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

月収

某機関電話相談員

7時間

2

日給

8万程度

某大学実験室TA

7時間

2日(6月まで3日)

時給

810万程度

某クリニックデイケア(7月〜)

23時間

2週に1

日給

12万程度

某大学研究補助(11月〜) 3.5/7時間

1.5

時給

6万程度

合計

3035時間/

4〜6日/

 

18〜23万程度

給与年収200万程度+副収入約70万。
7〜10月まで週4日勤務。月収は夏期など長期休みが入ると変動大。

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週39.5時間、全体をならした時給(換算値)は1403円。残業を週2時間とした場合の時給は1336円。

 

修士修了2年目(臨床心理士1年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

月収

某機関電話相談員

7時間

1

日給

4万程度

某大学実験室TA

7時間

2

時給

8万程度

某大学研究補助

3.5/7時間

1.5

時給

6万程度

某クリニックデイケア

23時間

2週に1

日給

12万程度

某クリニック

89時間

1

時給

4万程度

合計

4043時間/

5.56/

 

2223万程度

給与年収約300万+副収入約140万。

月収は夏期など長期休みが入ると変動大。

残業を抜いた正規の勤務時間は週41時間、全体をならした時給(換算値)は1414円。残業を週1時間とした場合の時給は1380円。

 

修士修了3年目(臨床心理士2年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

月収

某大学非常勤講師

3時間(2コマ)

0.5

コマ月給

4万程度

某大学研究補助

7時間

2

時給

8万程度

某クリニックデイケア

23時間

2週に1

日給

12万程度

某クリニック

89時間

2

時給

8万程度

合計

3537時間/

4.55/

 

2223万程度

給与年収300万程度。+副収入約70万。
給与年収は横ばいですが、勤務日数・時間が減りました。月収は夏期など長期休みが入ると変動大。

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週36時間、全体をならした時給(換算値)は1702円。残業を週1時間とした場合の時給は1656円。

 

修士修了4年目(臨床心理士3年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

月収

某大学非常勤講師

3時間(2コマ)

0.5

コマ月給

4万程度

某クリニック

89時間

2

時給

89万程度

某教育機関カウンセラー

4時間

0.5

時給

56万程度

某自治体SC

69時間

1

日給約3万

12万程度

合計

3035時間/

4/

 

2830万程度

給与年収350万程度+副収入約60万。
【年間休日数:147日 半日勤務日:73日】(休日の研修会・学会等の参加あり)

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週31時間、全体をならした時給(換算値)は2667円。残業を週3時間とした場合の時給は2506円。

 

修士修了5年目(臨床心理士4年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

月収

某大学非常勤講師

3時間(2コマ)

0.5

コマ月給

4万程度

某クリニック

89時間

2

時給

810万程度

某教育機関カウンセラー

45時間

0.5日×2

時給

1011万程度

某自治体SC

69時間

1

日給約3万

12万程度

合計

3438時間/

4.5/

 

3437万程度

給与年収420万+副収入約40万。一人暮らししてても貯金は多少出来ます。
SCは就業時間6時間の契約でも、残業にならない日はほぼなし。残業代は出ません。
【年間休日数:138日 半日勤務日:60日】(休日の研修会・学会等の参加あり)

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週36時間、全体をならした時給(換算値)は2838円。残業を週3時間とした場合の時給は2619円。

 

修士修了6年目(臨床心理士5年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

 

某大学非常勤講師

1.5時間(1コマ)

0.5

コマ月給

某クリニック

89時間

1

時給

某教育機関カウンセラー

45時間

0.5日×2

時給

某大学学生相談

67時間

2

月給

合計

3135時間/

4.5/

月収4345

給与年収530万+副収入約60万。
残業の多い業種のサラリーマンの1/22/3くらいの時間しか働いてないだろうから金額的には満足です。平日に午前休みの日があるのでいろいろ便利です。総残業時間が前年に比べて減りました。8-9月、2-3月は大学などの勤務日が減るので、週2〜3日程度の勤務になるのもうれしいところです。
【年間休日数:151日 半日勤務日:57日】(そのほか休日の研修会・学会等の参加あり)

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週31時間、全体をならした時給(換算値)は4280円。残業を週3時間とした場合の時給は3903円。


修士修了7年目(臨床心理士6年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

 

某大学非常勤講師

1.5時間(1コマ)

0.5

コマ月給

某クリニック

89時間

1

時給

某教育機関カウンセラー

4〜6時間

0.5日×2

時給

某大学学生相談

67時間

2

月給

合計

3237時間/

4.5/

月収4345

給与年収540万+副収入約65万。
基本的に前年度と同じです。総残業時間が前年に比べて増えました。
【年間休日数:131日 半日勤務日:61日】(ほかに休日の研修会・学会等の参加あり:)

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週31時間、全体をならした時給(換算値)は4330円。残業を週4時間(持ち帰り仕事は含まず)とした場合の時給は3836円。基本給は少しあがったけど、残業が増えたため相対的には下がった。


修士修了8年目(臨床心理士7年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

 

某クリニック

9時間

1

時給

某教育機関カウンセラー

4〜6時間

0.5日×2

時給

某大学学生相談

67時間

2

月給

合計

2935時間/

3日+0.5日×2/

月収4244

給与年収540万+副収入約110万。
非常勤講師がなくなったため、基本月給は減。イレギュラーの仕事が多かったので、給与年収は横ばい。
【年間休日数:142日 1日勤務:157日、半日勤務日:66日】(ほかに休日の研修会・学会等の参加が15日)

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週29時間、全体をならした時給(換算値)は4326円。残業を週4時間(持ち帰り仕事は含まず)とした場合の時給は3801円。


修士修了9年目(臨床心理士8年目)

 

勤務時間/

勤務日数/

給与形態

 

某クリニック

9時間

1

時給

某教育機関カウンセラー

4〜6時間

0.5日×2

時給

某大学学生相談

67時間

2

月給

某短大非常勤講師(後期のみ) 1.5時間 1コマ コマ月給

合計

3137時間/

3日+0.5日×2/

月収4446

給与年収550万+給与以外の収入約150万。
基本的には前年度と同じだけど、後期のみ非常勤講師が追加されたので給与年収はややアップ。
【年間休日数:142日 1日勤務:148日、半日勤務日:75日】(ほかに休日の研修会・学会等の参加が13日)

 

残業を抜いた正規の勤務時間は週32時間、全体をならした時給(換算値)は4558円。残業を週4時間(持ち帰り仕事は含まず)とした場合の時給は4037円。

以下、学生相談:週3〜4日、教育機関:半日×週1〜2日、非常勤講師1〜2コマの組み合わせ(年度により異なる)で週5日勤務

修了10年目(臨床心理士9年目):年収460+副収入(給与の良い仕事が1つ減ったため年収減)
11
年目(臨床心理士10年目):年収580+副収入(給与の良い仕事を得られたため年収増)
12
年目(臨床心理士11年目):年収630+副収入
13
年目(臨床心理士12年目):年収660+副収入
14
年目(臨床心理士13年目):年収690+副収入
15
年目(臨床心理士14年目):年収690+副収入(微増の予定だったが、コロナの影響で横ばい) 
16年目(臨床心理士15年目):年収710
17年目(臨床心理士16年目):年収740
18年目(臨床心理士17年目):年収750万(年間休日数140日、年間労働時間約1250時間)

 多分、年収的には週5日非常勤掛け持ち(現在、学生相談4日、教育機関半日、非常勤講師1コマ)の限界値に達していると思われます。

 

 これまでの仕事で、クリニック以外は残業しても基本的に残業代はでません。
上記の勤務時間はあくまでも事業所にいる時間です。掛け持ちをしていると、業務時間外のメールや電話での業務連絡や書類作成なども多少あり、自宅での仕事は週2〜4時間になります。 ⇒2023年現在、できるだけ残業・仕事の持ち帰りはしないようにしており、どちらもほぼゼロに近いです。

上記は基本業務によるコンスタントな月給・年収です。非常勤なのでボーナスはありません。

以上、参考になりましたでしょうか。見ていただいて分かるように、私の働き方は複数掛け持ちで、特に5年目くらいまでは、一つのところからの収入は小さなものでした。それをかき集めに集めて生活をしていました。
さらには、副収入に頼っているところもあります(頼れるように準備してきました)。⇒2023年現在、副収入はほぼありません。
これは、私のスタンスですので同じように考える必要はありません。

ただ、いわゆる”キレイな臨床の仕事”を最初から得られるとは思わないでください。
最初の35年は力を蓄えてチャンスをうかがう期間と考えてください。→2021.2追記:今後はその期間が5〜10年に延びるかもしれません。

純粋に年収のことだけを追い求めれば、私の例よりも早い時期にもっと稼ぐこともできます。
私は、CP1年目からSCは務まらないと思い、3年目まで応募しませんでしたが、周囲には1年目から応募し採用されている人も多くいました。
(2021年現在、首都圏では1年目では採用されにくい状況になっています)

また、私はCP3年目にはSCを週2日、4年目には週3日にすることもできましたが(複数の自治体のSCに応募し、採用されたが1つ以外は辞退)、仕事全体のバランスや将来的な展望などを考えてCP3年目・4年目ともに週1日に留めておきました。
年収のことだけを考えて仕事をしていたら、CP3年目で給与年収450万、4年目で給与年収600万、6年目(例:SC3日、学生相談2日)で750万くらいにはすることもできました。

また、CP3年目に運よく某大学で助教になるチャンスもありましたが、あまり評判の良い大学ではなかったことと
長い目で自分のキャリアを考えたときに必ずしもプラスにならないと思い、辞退しました。
もし、そこでそちらにいっていたら、年収はどうなっていたか分かりません。
  →→→しかしその後、教職員への給与未払いなど度重なる問題が生じ、文科省からその大学の母体である学校法人に対して解散命令が出されました。こわやこわや。


年収をあげることも大切でしょうが、この仕事はいかにクライエントに資するか、です。
そのための研鑽の時間と自分のゆとりがないとできないものと考えています。

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